研究の方針

本研究会の先行研究として次の二つがあります。

  1. 日本計画行政学会、城山英明、鈴木寛、細野助博編著『中央官庁の政策形成過程:日本官僚制の解剖』中央大学出版会、1999年

  2. 野中郁次郎、泉田裕彦、長田晃也編著『知識国家論序説:新たな政策過程のパラダイム』東洋経済新報社、2003年

1. によれば、典型的な官僚主導型の政策形成とは、中央官庁の政策担当者(課長補佐クラス)がコアとなって、省庁内-省庁間横断的な「創発→共鳴→承認→実施・評価」のプロセスを作り出すものです。「政策官庁」主導型の政策形成は、日本の開発主義段階(村上泰亮:1992)では高い有効性を発揮しましたが、現在はいくつかの理由から十分に機能していません。

2.によれば、政策形成は知識創造のプロセスであり、組織的-組織間知識マネジメントの概念が有効です。そこでは共有されたコンテキストの「場」を重層的に創造し、創造的な対話の中から知識(=政策)を創発する仕組みが必要です。しかしながら企業の単一組織とは異なり、実際の政治状況では、コンテキストの場は時々刻々変化しており、権力政治の中で対話を進める方法論は十分には明らかになっていません。

このように1.及び2.は日本の政策形成についての優れた研究ですが、日本社会の状況に対応するアップデートを必要としています。本研究会はこのような先行研究の成果を継承発展させるものです。